「広瀬くん東京から来たってほんと!?」
「やっぱ東京って芸能人としょっちゅう会うの?」
「広瀬くん部活何してたの?」

転校初日にして、クラスメートがワイワイと広瀬に集まる。

「ちょっとトイレ行ってくる。」

「待ってよ真央〜私も行くー。」

同級生と思っていた相手に恥ずかしい真似をしてしまい、少しだけ教室に居づらいと感じた。



「美優の言ってた通り、広瀬くんカッコいいね。」

「う〜ん……。」

「でもびっくり。真央と広瀬くんが顔見知りなんて。」

「今朝会ったばっかなんだけどね。それをアイツが『はい知り合いです。』とか言ってさー、先生が『じゃあ席は田中の後ろにしとこう。』とか……。」

「でもいいじゃん!広瀬くんイケメンだし、バスで始まった恋なんて…やば〜い!」

「やめてよみほ。アイツのせいで、あのゴリラに怒られるはめになったんだか…」

「おい田中真央。」

ふと、後ろから聞き慣れない声が真央を呼ぶ。

振り返ると、
そこには、先ほど真央の後ろの席でクラスメイトに囲まれていたはずの広瀬が、立っていた。

そして、広瀬は真央の方に近づく。

「お前、学校では寝ないのか?」
「!?!?」
若干の笑みを浮かべている広瀬から言われた突然の言葉に、真央は呆気にとられていた。

そして、広瀬は一言それを言っただけで、真央の横を通り過ぎて行った。



「うわぁ、なんかすごいよ真央。」

「どこが?!なんかもう嫌だよ。あんな人と席が前後ってことが。」

「なんかマンガみたいだね。」

「マンガ?」

「普通なら、主人公はイケメンの転校生をものすごく嫌ってたのが、次第に好きになるってオチ!そして友達も実は好きでー、みたいな?」

「…みほ、もしかして広瀬に一目惚れしたとか?」

「えぇ?それは断じてないなー。私、好きな人いるし。」

「えっ!誰!?」

「ふふふ〜実はね〜」

「おーい!みほと真央ー。」

遠くで大山がこちらを見て手を振っている。

「タイミングの良いこと…。」

「えっ?みほ何か言った?」

「なーんでもない!あっ、大山の手にメロンパン持ってるの発見!行こっ真央。」


みほが言ってたマンガみたいなオチ。

なんだかみほと大山とでも例えることが出来そうだなと真央は心の中で思った。

目の前ではメロンパンを取るみほのほっぺを引っ張る大山。

果たして2人の今後はどうなるのだろう?