「舜英様~#__しゅんえい__#。舜英王女様~」
ここは灯国、その中心都市であり王族の暮らす王宮、のある街『紅泉#__こうせん__#』。
その宮中に侍女の声が響く。

「なあに、泡鈴#__ほうりん__#。騒がしいわよ」
侍女の声に、応えるように可愛らしい声と華奢な体がひょこっと扉から身を乗り出した。

「あぁ!舜英様!!そこにおられましたか。」
大声を出しすぎて疲れたのか侍女の泡鈴は息を切らしながら舜英に近づいた。

「全く!舜英様、貴方という人は私の目を盗んで何処かへ行くのやめていただけますか?!」
泡鈴の悲痛な叫び声が宮中の奥の室に響く。

「何を言っているの?泡鈴。私を見張るのがあなたの仕事でしょ、何仕事サボってるのよ。」
舜英の嘲笑う声が泡鈴に突き刺さった。

『全く、この王女様ときたら王族の欠片も無いんだから。5歳の頃からお世話をしているけれど、頭と口が良く回るとこ以外の取り柄なんか無いし、最近では王から疎まれているとすら聞く。はぁ、仕える相手を間違えたわ。』
と、泡鈴は密かに思っていた。