「なんだそりゃ」

眉間に、これ以上は深く刻めないほど深く皺を作りつつ、パソコンをスリープモードから起動させた。
先程の会議の報告書を作らなければならない。報告書のフォーマットを見つけたところで、尾関がまた口を開いた。

「だって、高山って主任にメモ渡す時だけ『zooクリップ』使ってるじゃないですか」

マウスを握る手が止まる。

(…よく見てやがる)

高山があえてあのクリップを使うのは、ちょっとした伝言の時などだ。
仕事の要件などは付箋にと使い分けているらしい。
そしてそれは、俺にだけ使われる。
単に、直属の上司でメモをはさむ回数が他の社員より多いということもあるのだが。

「主任が作った商品、主任だけに使うとか、もうカワイイじゃないですか」

尾関は仕事を放棄したのか、通路側の端の自席で仕事をする高山をニヤリと見つめた。