何を話しているかはわからないが、尾関の言葉に少し頬を紅潮させて何か反論しているらしかった。
少し拗ねたような顔。

そんな可愛い顔、俺以外知らなくていいのに。

胸の中がざわざわと波立っていくのがわかった。

「ーー高山!」

呼んだ瞬間に、後悔する。

「園部主任」

急いで俺のもとへ来る彼女に邪気はなく、ポニーテルが嬉しそうに揺れていた。

「あー、昼休み中にすまん。これ、連休明けまでにまとめてもらえるか」

さきほど届いた売上データの束を渡す。

「…あ、はい!」

その紙を少し戸惑いながら受け取る仕草は、やはりいつもの彼女とは言えなかった。
だから、このメモを渡すのは心配だからだ。
そう言い聞かせてもう一つの紙を渡した。

「あと、これ」

俺のクリップを見れば、伝わるはずだ。

「至急頼む」

何となく、反応を見ることができずにそのままデスクから立ち上がってフロアを出た。
見開いた瞳が、少しだけ潤んでいた気がした。