私の実家に着いたのは、夜の9時を過ぎていた。

「おじいちゃん!」

玄関を開けて、リビングに行くと、誰もいない。

もしかして、病院に運ばれた?

私は、持って来たスマートフォンで、お母さんの電話番号を探した。

その時だった。


奥の襖が開いて、泣いているお母さんが出て来た。

「お母さん。」

「夏海、ごめんね。おじいちゃん、間に合わなかった。」

私は、床に膝を着いた。

「夏海、おじいちゃんは?」

遅れて家に入って来た雪人に、お母さんは首を横に振った。

「そうでしたか……」

雪人の一言に、床に私の涙が零れる。

「お……じい……ちゃん……」


最後に、おじいちゃんの声、聞きたかった。