朝人は、頭が真っ白になっていた。

神崎が、腕から血を流している?
さっきの音・・・やっぱり銃声・・・なのか?

「おい、神崎・・・?」

「う、あああ・・・!」

神崎は、訳が分からないという顔をしながら、きっと今まで経験したことの無いであろう痛みに、必死に耐えている様子だった。

落ち着け。そうだ、今は考えるよりまず先に、こいつを病院に連れて行くことが先決じゃないか。

「神崎、しっかりしろ・・・!」

朝人は、撃たれたと思われる神崎の左腕になるべく負担をかけないように、右腕を自分の肩にかけてやった。

「う、ああ・・・!」

それでも、動かしただけでも痛いんだろう。神崎は悲痛な声を上げている。

「だ、大丈夫か!?」

「ち、畜生・・・いったい何が起きたんだ・・・またテロか?」

2020年頃から、日本でのテロ発生率は急増している。

「俺にも何が何だか、訳が分からない・・・」

朝人は、頭が全く回らず、ただそう言うしかなかった・・・。