朝人は電話に出た。

「はい、もしもし?」

「逃げなさい、あと30秒」

「はい?」

「逃げなさい、あと25秒」

逃げろ、とはいったいどういうことだ?

朝人は、最近自分に関係する出来事の中で、恨みを買うようなことは無かったか思い出してみた。
だが、思い付く限りではそんなことは無い筈だ。

一番気になることを聞いてみた。

「あなたは、いったい誰なんですか?」

「あと16秒」
そう言って、電話は切れてしまった。

何なんだよと思いながら、どうせ悪戯電話だろ、と納得した。

もうそろそろ、さっきの・・・そう、あの声の感じは女だ。
あの女が言っていた時間が迫ってきた。

どうせ何も起こらない、と思いながらも朝人は、「何か」が起こるのを心のどこかで期待していた。

3、

2、

1、

0。

ほら、何も起こらないじゃないか。と思った瞬間、

ズドン!