朝人は、妙に落ち着いていた。
あまりに突然いろいろなことが起きすぎて、頭がおかしくなったのではないかと不安になる。
確かに、数十分前まではなにか面白いことはないかなと思っていた。だがこんなことは望んでいない。

しばらくすると、急に車が止まった。
どうやら、「自称FBI」のこいつらの目的地に着いたようだ。

すると、やっと横の二人が腕を離してくれた。それは、「もうここからは逃げられないぞ」という、この黒服たちからの警告にも感じられた。

車から降りると、見慣れない風景が広がっていた。
そこには青い海が広がり、大きな倉庫のような建物が沢山並んでいる。港のようにも感じられた。
ここはどこだろう?

「ここはどこなんですか?」

自然に運転席にいた男に質問していた。
その時、朝人は自分でも驚いた。いつの間にか、この誘拐犯たちに敬語で話していたからだ。頭が、この人たちは信用できると認識している。一体何故だ?

「ここは・・・アメリカのある港の埠頭、とだけ言っておこうか」

真面目な顔で、そう男は答えた。
そんなわけがない、1、2時間前までは、日本の千葉県にいたんだぞ。

そう思った瞬間、ギギギ・・・という唸り声を上げながら、後ろの倉庫の扉が開いた。

朝人は、目を疑った。
古びた建物の内部は、倉庫とはとても言えないところだった。

ハイテク機器が綺麗に並ぶ、そこはまるで「FBIの秘密基地」だったのだ。