(仕事のできない奴と思われてるんだろうな)

ため息をつきながら、今日の仕事を組み直す。
優先度の高い仕事を終わらせたら、入力を始めて、と考えた。
パソコンの画面を見つめながら、これは休憩取る暇もないかもな、と再びため息が出る。

「人がよすぎるんだよ、藍里さんは。」

「え?」

吉崎くんは言うだけ言って席を立つと、「会議行ってきまーす」とフロアを出て行った。

途中になっていた仕事のファイルを開きながら、考える。

吉崎くんはまるでコーヒーのような人だと思う。
苦い思いをするとわかっているのに、濃厚な香りに惹き寄せられてしまう。
甘くない人。

(私は、ココアが好きだもの)

そう言い聞かせて、仕事に戻った。