「真島、それ手伝おうか」

斜め前から声をかけられ、顔を上げる。
パソコンと電話台の隙間から、同期の吉崎竜が、心配そうに私を見ていた。

吉崎くんは、こげ茶色の髪をサッパリと切り揃え、つり目気味の大きな瞳はまるで猫のようだった。

「金曜って、明日じゃん」

綺麗な形の眉を下げている。

「大丈夫だよ、ありがとう」

私は心配いらないと手を左右に振ったが、吉崎くんの眉間のシワは解けない。

「あ、じゃあこれ手伝ってくれる?」

私は山田さんにもらったコーヒーを吉崎くんに差し出した。
キョトンとしている吉崎くんの机にカップをそっと置いて苦笑した。

「私、コーヒー飲めないから。飲んでくれると助かる。」

吉崎くんは、なるほど、と呟いてカップを受け取った。