コツコツ…


ああ、こっちに来てる。


暗くて狭い空き教室の中、私はゴクリと息を呑んだ。

「ひな、こっちに来るよ」

そう言って震える手で私の腕を掴む春香に軽く微笑む。

「大丈夫。大丈夫だよ、はるか」

自分に言い聞かせるように呟いたその言葉に違和感を感じながらも彼女を抱きしめた。

彼女の名前は春香。私が唯一信じられる友達。

春香だけは絶対、私が守らなきゃ。


「ひな。私ね、あの人達見たことあるの」

「…え?」

「私達を追ってきてる鬼達のこと。あれは…」


何かを言いかけた春香の口はそこで止まった。


ガラッと勢いよく開けられた扉の方へ私達2人の視線がいく。



「…やっぱここだった」

「へえ、すごいじゃん海渡」



そう言って私達を見下ろす彼等こそ


この鬼ごっこの鬼なのだ。