年は知らないけれど、一緒に過ごすにはどこか背伸びをしたい気分にさせるひとだった。


会う日は必ず赤いマニキュアをした。

お気に入りのハイヒールを履いた。

重く甘い香水をつけた。

髪を巻いた。


林檎みたいな濃いルージュを引いた日も、マスカラを重ねた日も、けぶる視線で私を見据えた彼は、すべてを褒めた。


初めはそれが心地よかったのだ。


好きなように私を着飾ったとき、何も否定しないでくれるのは楽だったから。


どこまでも清潔なのにいつでも息苦しいほどの色気を寄越しながら、彼は強い目をしていた。


あの強い目が、少し色素が薄い美しい瞳が、真っ直ぐ私を向いているのが好きだった。


赤が好きなのと言った私に、あなたに似合うよと頷いたさりげなさが好きだった。




崩れるように、堕ちて。そうして。


分別のある、むせ返るような夜を重ねた。