楠君を呼び出して、私は一方的に早口で手紙の事を話して謝った。

そして逃げるようにその場を去った。

楠君の顔をまともに見る事ができなくて…

走り去る時楠君が何か言ったみたいだったけど、聞き返す勇気もなかった。


そんな私を見て、楠君はどう思っただろう…

怒らないはずがないよね?

もう口をきいてはもらえないかもしれない。

楠君から借りた本、どうやって返せばいいだろう…


考えているうちに涙が溢れて止まらなくなった。

こんな風に泣く位ならもっと早く正直に話せば良かったはずなのに…

いつだってそう。

手紙の事も自分の気持ちにも気付くのが遅すぎるんだ。

好きになってから後悔したってどうしようもないのに

だけど…

私はもう知ってしまった。

楠君の優しさも、好きだって気持ちも。

後戻りは出来ない。

どうするの?



泣き顔を冷たい水で洗って鏡を見た。

泣き腫らした目の私が映る。

私の恋は前途多難で、きっと叶わないだろう。

でももう逃げない。

そう決めたんだ。

この先どうなるかなんて分からないけど、頑張ったねって自分に言えるように…