携帯を開くと驚いた……
1件のメールが届いてた先は
らぶフォルダだった…
ここに届くアドレスはこの世にただ1人しかいない…
先生。
――先生からのメール…?!
有り得ない状況に戸惑いながらメールを開く…。
『今日はお疲れでした。忘れ物は取りに来たんだね?
少し話がしたい。時間があったら駅前のコンビニに来てくれないかな』
わざわざメールくれたんだ…
でも話がしたい…って…
何で?
話の途中で逃げたから…?
携帯を閉じてバッグの中に戻した――。
「誰からだった?」
後輩の悪気ない質問。
「…うん、好きな人…」
「ああ…教習所の?」
驚いて後輩の智恵ちゃんを2度見した…。
「え?!何で知ってるの…!」
智恵ちゃんはフッと笑った。
「分かるよ~♪だって山崎さんってすごい分かりやすいんだもん(笑)」
智恵ちゃんが言うには、教習所(先生)の話をしてる私はテンションが異様に高いらしい…(笑)
それで分からない方がおかしいって…。
「好きな人からのメールなのに…なんか元気なくない?」
私は事情を後輩に話した。
「気持ちは聞かなかったことにしたいって確かに酷いね…」
私と智恵ちゃんはホールに移動して席に着いた。
「でも気になるな~先生ってモテるんでしょ?なのに気持ちは聞かなかった事にしたいって今まで皆に言ってたのかな」
「分からないよ…」
「…………私さ思うんだけど、山崎さんって本当にフラれたの?」
智恵ちゃんの疑問詞。
「だって……あんなこと言われたんだよ?」
「確かにそうだけど…普通だったらごめん!とかじゃない?
なのに……。なんか言った方の気持ちになってみると、もっと他に意味が有りそうな気がするんだけど…」
――言った方の気持ち…?
先生の気持ちってこと?
「とりあえず私だったらそう考える!」
ポジティブ思考だからって智恵ちゃんは笑った。
「メールで話がしたいって来てたの…行った方がいいかな?」
智恵ちゃんは絶対に行くべきだ!!!!チャンスだよって言ってくれた。
今22時過ぎ…
先生が仕事終わるのってどれくらいだっけ…?
「とりあえず連絡したら…?」
「うん…でも充電が切れちゃって」
ついさっき本当に切れた私の携帯…。
「じゃ尚更早く行きなよ!」
智恵ちゃんの後押しに私は店を出た。
――先生に逢いたい…
逢いたかった
そして逢えた。
……でも
心を占める先生の存在はいつから
寂しい方に変わってたのかな…――
そう想いながら駅前のコンビニに向かった……。
――22時53分
駅前のコンビニに着いた。
駐車場には車が数台停まってた。
…確か前もこんな事があったな…
あの時は先生にお礼しようって思って肉まん買って待ってたけど……
結局先生に何も渡せないまま終わっちゃった。
「またタイミングが合わなかったな…」
バイクから降りて鍵を外した時、目の前のコンビニのドアが開いた。
その人は私を見つけて慌てて店から出て来た様子だった…。
「………!?」
私服だから一瞬誰か分からなかったけど…
「来た…よかった…」
先生…。
待ってたんだ……。
「充電が切れちゃって…」
そう言うと、そうなんだって先生は頷いてくれた。
「……あの話って…?」
先生は私を手招いてくれた。
「ドライブ…行くか♪」
「い、今からですか?」
「約束してたじゃん?行こう!」
覚えてた…冗談じゃなかったんだ……
話ってこれの事…?
「はい…♪」
――って先生…
私告白したんだよ?
なのに、いいの?
それとも
本当になかった事になってるの……?
先生の車の助手席が開けられた。
冗談で鍵渡されて「運転する?」って言われたけど
「絶ッッ対無理!!!」って言って断った。
久しぶりだ…先生の運転する姿…
――カッコイイ…
本当にカッコイイしか言葉が浮かばない…
先生に車なんて最強の組み合わせ…♪♪
あとスーツ…
……ていうか、好きな人だったら何でも弱いんだけど…。
車が走り出して5分くらい経つ…
だけど
「………………」
「………………」
先生と私の間は沈黙が続く。
――先生今何考えてる…?
嫌なら約束破ってもよかったのに……
先生の運転はすごい優しい。
なんだか心地いい…。
窓の外を見る――
街の電気が夜の闇をまばゆい位明るく照らす…
窓に映る私の顔の奥には
大好きな先生の横顔が映る。
――真剣な眼差し……
窓だったら先生のこと素直に見れるのに……
こんなに近くに先生がいるのに……
「――――…だな?」
「えっ?」
先生の声が聞こえた気がした…。
先生の方を向く…
「そんな大きな忘れ物する人って初めて見た気がしてさ…(笑)」
咄嗟に両手でバッグを覆う。
先生の顔はいつもの笑顔。
「あっ…ありがとうございました!」
「ん?何が?」
「…えっと置き手紙…」
「あぁ…いいよ!」
赤信号で車が停まる。
「……先生どれくらい待ってましたか?」
「……まぁ教習2時間分位」
「え?!そんなに…?」
「まぁ…待つのは慣れてるから…(笑)」
「………………?」
先生の言葉に?マークが浮かぶ。
「あ、確か駅前のコンビニって前もなんかあったよな?」
「え…あ、あれは…その…」
言っていいものか…
「何?教えてよ」
「笑いませんか……?」
笑わないよって先生は言ってくれた。
「120円のお礼…」
「120円のお礼?」
「高速のパーキングエリアで奢ってくれた120円のお礼しようと思って、肉まんを渡したかったんです…」
ちらって先生の顔を見た。
そしたら
「可愛い♪」
って………。////
先生のその言葉のせいでまた沈黙…。
――先生が可愛いって…!!!
そりゃ深い意味はないんだろうけど
今の私には………////
静かに沈黙を破ってくれたのは先生だった。
「話なんだけど……聞いてくれる?」
…………話?
「…昼間の事」
私は声に出さずに頷いた。
先生は近くのコンビニの駐車場に停まって、話だした。
「俺らの仕事ってさ、おなじ『先生』って呼ばれる立場であっても『教師』とは立場が全然違うんだ…。
教習所は民間の会社であって、教官は会社員…。
だから俺らにとって教習生は『お客さん』なんだ…。」
――………先…生…?
「壁があるんだ…」
そう言う先生の目は、なんだか哀しそうだった…。