担当が誰なのか聞いたら私の知らない先生で
逆に聞かれて答えたらその子は
「あ~!あの若い先生?いいな~!!」って名前だけですぐ反応した……。
ほらね、先生。
油断すると皆があなたを好きになる……
あなたは特別なんだよ。
オートマの番が来た。
テスト前に配られた紙にはコースが示されてあり
その紙に自分がどう進行するか赤ペンで印を付けていった。
私は進路変更が苦手だから
あえて進路変更のある道は外した…
テストは乗車する前から始まっていた。
後方確認、前方確認
ドアの開閉
ミラーの確認
シートベルト
発進前の後方確認
宮田先生が教えてくれた通りにやった
そして私の運転する赤い車は自動車学校を出発した……。
卒検の担当は勿論宮田先生じゃなかった…
担当したのは仮免の時と同じ先生だった。
厳しくてちょっと苦手…
だけど、試験は幸いにも目的地まで何もおとがめもなく進んでいった…
…それはつまり
『卒業』を意味していた。
試験が終わると待合室に戻され、一人一人に注意する点を先生は言った。
卒検を受けた7~8人中待合室に戻されたのは5人だった。
そこに残された皆に合格を言い渡された。
「やったー!!」
「超嬉しい~♪♪」
とか周りから聞こえてくる言葉。
……だけど私は…?
待合室で話してた子も合格していた。
「合格よかった~!ね?」
私だけが素直に喜べてない…
「…う、うん」
これで先生とも会えなくなる……
一気に寂しさが押し寄せて来た。
あっ先生に手紙渡さなきゃ…
それにお土産も…
でも
何から行動したらいいんだろう…?
解散の後、私は受付のロビーに戻った。
卒業って呆気ない…
高校とかの卒業みたいに涙とか思いが込み上げるものはなく
「合格」「おめでとう」「さようなら」の3つ
ただ呆気ない…。
「弥生!」
名前を呼ばれて振り向くと、玄関からえりが向かって来てた。
「よかった…まだいた~。で、運転はどうだったの?」
あっ合格したのを2人に報告するの忘れてた…
「うん‥合格したよ」
「そうなんだ…」
えりが私の気持ちを察したみたいで周りとは違って上手く喜べずにいた。
「弥生‥頑張ったじゃん!」
「偶然だよ‥」
「それは?」
えりが私の持ってた紙袋を指さした。
「前に言ってた旅行のお土産…先生に渡そうって思って」
「先生に報告は‥もうした?」
「まだ……」
「先生は今教習中?」
「いや、さっき放送で呼ばれてなかったから教官室だと思う…」
えりが私の手を引いた。
「行こ!先生に言うんでしょ?」
「………………」
この時、優柔不断の私の背中を押してくれた
えりが居たから私はきっと
ここまで頑張れた…
そして今も――――。
「うん…」
教官室の前に立つ私。
えりは階段近くの陰に移動して見守ってる。
だけど教官室を目の前にするとなんか緊張して
足も手も動かない……。
そこに天の助け――
「どうしたの?」
受付のお姉さんが話かけてきた。
「あの…先生を呼んでほしいんですけど!!」
そのお姉さんは「宮田君ね♪」って言うと、教官室に入っていった。
………………////
いや、私お姉さんに先生の名前言ってないんですけど~。
バレてる…顔覚えられちゃったかな?
毎回配車予約するとき先生が休みの日は乗車しないって言って困らせてたからね…
お姉さんが教官室で先生を呼ぶ声が聞こえる。
私のとこに来ると「ちょっと待っててね」って言って、笑顔で受付に戻って行った。
――ありがとう
待ってる間凄く心臓がバクバクしていた…。
告白するつもりじゃないのに
心臓は告白するみたいに緊張度はMAX……。
待ってる時間も長く感じた。
その時教官室のドアが開いて先生が出てきた!
ん?……おでこが赤い
「眠い……」
先生は目を擦りながらそう言った。
…可愛い~~~////
卒検合格したことを先生に伝えると
「おおぉ…!」
って先生は驚いてた。
やっぱり好きな人を目の前にすると緊張しちゃうな…
でも私、先生にちょっとでも近づこうって思って咄嗟に教本を取り出して
「この問題が出ましたよ!」
って先生の横にグイッと迫りました。
こんな時でも、悪知恵は働くんだよね~~…
だけど問題…
近寄り過ぎてますます緊張……(笑)
手が震えちゃってます。
しかも今気付いた…!
先生の目線は教本にいってて、私が持ってる教本が震えてるのが丸分かり…
その緊張が伝わったのか先生までも緊張してる感じだった。