「永ちゃん…どうしよう…」
半場泣きっ面で永ちゃんに一部始終話した。
「そうね~…教習所の先生か~~」
永ちゃんは自分のキャリーバックをベットから降ろした。
「お土産はクッキーだけでもいいと思うよ!
たくさんやりたいのは分かるけど相手からしたら貰いすぎは、やっぱり遠慮しちゃうかもしれないし…」
「そうかな…?」
「先生だって本当は気持ちだけでも嬉しいと思うよ!」
「そう…だよね!私も量よりその人の気持ちが嬉しいもん」
「そういうこと!」
「…でもクッキーってベタ過ぎない?(笑)」
「いいじゃない♪失敗はないから!」
そんな永ちゃんの一声で安心した。
その後も永ちゃんにいろいろアドバイスを受けて
私も急いで荷物をキャリーバックに入れて帰国の準備をした。
皆飛行機の中でスヤスヤ眠ってる。
日本とフランスの時差は8時間…
同じ世界にいるのに
日本とフランスの時間は今までも、そしてこの先も交わる事がない。
当たり前の事が私は恨めしかった……。
先生が今過ごしている時間と
私の過ごすこの8時間差が、とてつもない距離に感じたから。
たった5泊6日だったけど
だけどその中には今までになかった感動と
先生に対する想いでいっぱいだった……。
初めての海外旅行はこうして終わった。
朝フランスを出た私達は、夕方の6時に九州の空港に着いた。
旅の疲れでそのあと電車の中では寝てしまった。
地元の駅に着くとイルミネーションが夜空に輝いていた。
もうすぐでクリスマスだ……。
お土産の事で忘れてたけど
最後の授業は先生じゃないんだった………
――ねぇ先生。
あなたのイヴは誰がサンタクロースですか?
目の前のクリスマスツリーは、寂しい心を一層深めていった…。
あなたにとって私はどんな存在でしたか?
ただの教え子?
一緒に居て
ほんの少しでもドキドキしましたか…?
ついに迎えてしまった卒検の日…。
昨日イヴの日に受けた最後の配車の担当はもう名前も覚えてないおじさん…。
見極めなんて落ちればいい…!!
そしたらまた先生に会える理由が出来る
そう思ってた。
でも私がちょっとでもミスするとそのおじさんは
「宮田先生の教え方が悪い」とか
「指導力が足りない」とか
いちいちムカつく事言う先生だった…。
私のせいで先生の面目が潰れるのは嫌だ!!
だからこれでもかってぐらいに運転に注意したら
おじさん先生からは見極め「良好」サインをもらった……。
先生以外から教えられても嬉しくないし、楽しくもない…。
それくらい先生の存在は大きかった。
だけど、合格したら今日で最後になるかもしれない…。
本音は卒業なんかしたくない…
ずっとずーっと先生の傍にいたい!!
彼女いるかも分からないけど
まだその存在を知るまでは好きでいていいよね……?
卒検は前日に時間と試験教室が指定されて私を含め、7~8人がその教室に集まった。
そして10時……
始業チャイムと同時に筆記テストが始まった。
どれだけ時間が経ったか分からないくらい集中してた……。
私は一通り終わって時間が余った。
怪しかった問題を見直してるとき――、
「もうすぐチャイムなるけど、それは関係ないからそのまま続けて下さい」
監督役の先生が教壇の横の椅子に座って、そう言った。
数分すると先生の言う通りチャイムが鳴った。
~♪♪♪
この音ももう聞くことはないんだ………
これが最後のチャイム…。
耳の中にチャイムの音が響く
今までにないくらい私はチャイムに耳を傾けた。
~♪♪♪
そのチャイムから少し経って、筆記テストが終わった…。
そのあと私達はそのまま教室に待機させられ、お昼ご飯のパンが配られた。
たしか仮免の時も同じ様にパンが配られた。
手元を見ると仮免の時と全く同じ種類のパンだった…
メロンパンとハムパン
こんな些細な思い出も多分一生忘れないものだと思う。
パンを一口ずつゆっくり食べる…
これからはメロンパンを見る度思い出すんだろうな‥
卒業って言う寂しい思い出を…。
ハムパンを食べるときっと切なくなるんだ‥
先生を思い出すから……。
ガラッと前のドアが開くと校長先生が入って来た。
「おめでとう。皆さん筆記は合格でしたよ!
次は14時から実技なので、時間になったら1階の受付に集まって下さい」
それだけ言い終わると校長は教室から出て行った。
私は筆記合格をえりと留衣ちゃんにすぐメールで伝えた。
留衣ちゃんから返信が来た。
『おめでとう!!次は運転だね。落ち着いて頑張って♪
卒検合格したら先生にも報告だよ!』
私も打ち返した。
「ありがとう♪
勿論報告するよ!手紙渡そうと思う(アド付きで)。」
『手紙って告白するの?』
「ううん!お礼とかアドレスを書こうかなって思ってる。」
『そうか♪でもちゃんと口でもお礼を言いなよ♪』
「うん!ありがとう」
メールを終わらせて、先生に渡す手紙を書き始めた。
何て書こう……?
今の気持ちは上手く言葉に出来ない想いだけど
素直に正直に自分の気持ちを伝えたいな‥
先生に対する純粋な「ありがとう」を。
――ペンが走る。
『先生いつもありがとう。
ここまで来れたのは先生のおかげです。
少し時間はかかったけどね…(笑)
先生と話すのが毎回すっごく楽しみでした。
卒業して話せなくなるのが嫌です……』
――ペンが止まる。
やっぱり卒業は寂しい…。
先生が好き。
卒業しても繋がっていたいよ…。