藤堂先生がそう説明すると、鈴木主任が「そういうことなら、藤堂先生にお任せしようかな」と帰り支度を始めた。
思わず「待って」と言いそうになる。
鈴木主任には帰ってもらいたいが、藤堂先生と二人きりになになるのも気まずい。

しかし、私の思いをよそに鈴木主任はさっさと帰っていってしまった。
処置室には藤堂先生と二人きりだ。


「気分はどうだ?」
「もう大丈夫です」
「点滴をして大分良いとは思うけど無理はするな」


藤堂先生はベッド脇にあるパイプ椅子に腰かける。
横になる私をじっと見るから、恥ずかしくなって布団を口元まで引き上げた。


「なんで隠すんだよ」
「いや、だって……」
「だってじゃないし」


藤堂先生はニヤニヤしながら布団をさげた。


「点滴が終わった。帰るぞ」
「はい」


藤堂先生に肩を支えられ、起き上がる。その手の温もりにドキッとしてしまい、唇を噛んだ。