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その誰かは意外と近くにいた。


2人と別れて1人になった帰り道。


いつもの道には赤い屋根の家があって、そこにはよく吠える犬がいるのだ。


人が歩道を歩いていると、すぐにほえたてて来る。


何度ここを通っても顔を覚えてくれないのだ。


今日もまた、犬は大きな声でほえたてて来る。


思わず早足になってしまうのだけれど、今日はその足を止めていた。


犬にも効果があるんだろうか?


不意に、そんな事を思ったのだ。


牙をむき出しにしてこちらを睨み付けている大型犬。


鎖がなければ飛びかかってきているかもしれない。