「あたしが入れるから、薬を貸して」


「初美、いいの?」


「あたしは好きな人いないしね。田中君のことも見た目はいいなって思ってるし」


「ごめんね、ありがとう」


あたしはそう言ってスカートから小瓶を取り出した。


ベンチの前に立って部活を見学しているフリをして、初美の姿を隠す。


後ろで水筒の蓋が開けられてキュッキュという音が聞こえてきて、あたしの心臓はドキドキと高鳴りはじめる。


この薬が本物ならきっと使える。


あたしは航と両想いになれるかもしれないんだ。


期待しすぎちゃいけないと思いながらも、どうしても期待してしまう。