オルキスはわずかに笑みを浮かべ、そして声を張り上げた。


「門を開けよ!」


高らかに響いた凛とした声音に、たちまち門番たちは警戒を解き、門の内側にいるだろう誰かに声をかけた。


「オルキス王子がお帰りになられた! 今すぐ門を開けよ!」


その一言で、リリアの頭の中が真っ白になった。

早速開かれた城門をくぐり抜け、白馬は徐々に速度を落としていく。

中庭のようなところで進みを止め、白馬を降りフードを取ったオルキスの元へと白髪の男性が慌ただしく走り寄ってきて、折り目正しくお辞儀をした。


「お帰りなさいませ、オルキス王子」

「あぁ。留守中、何か変わったことは?」

「オルキス様への謁見を願う若い女性の数が著しく増えたくらいで、他は特に何も」


苦笑い気味の返答にオルキスは顔をしかめてから、リリアに向かって両手を伸ばした。


「手を貸そう」


リリアは声の出し方を忘れてしまったみたいに何度か口を開け閉めしたのち、やっとの思いでオルキスに頷き返し、恐々と手を伸ばす。

馬から降ろされ地に足をつけるまでの間、リリアの頭の中にオルキスとの記憶が次々と蘇ってくる。