それでも、どの女性もリリアにはあか抜けて見えた。
人だけでなく建物など目に映るもの全てが、そして肌で感じる空気にすら、リリアには洗練されているように思え、いちいち圧倒されてしまう。
「まぁ! あの白馬はオルキス様のではなくて!?」
聞こえた興奮気味の女性の大きな声に、リリアはドキリとする。
見れば通りの少し先に、顔を輝かせこちらを見つめている女性がいた。
「オルキスさまーー!」
その女性が親しみを込めて大きく手を振ると、周りにいた人もこちらへと振り返り、ぱっと表情を明るくさせるなど、各々に反応を示した。
オルキスの麗しい見た目だけを考えても、その人気者ぶりは当然のことのようにリリアには思えた。
しかし、若い女性からの人気の高さがどうしても目についてしまい複雑な気持ちになっていると、自分に気付いた人々が揃って驚愕の表情を浮かべ始めるのを視界に捉え、ハッとする。
「運命の乙女!? まさか嘘でしょ!?」
続けて、女性の悲痛な叫びを聞き取り、自分が髪を隠していないことを思い出す。
リリアが慌ててフードを掴み取ろうとしたその時、ひとりの老婆が街路によろりと進み出てきて、拝むように震える両手を合わせた。