うんざりした顔でアレフとセドマが頷く一方、リリアは驚きで声を上げる。
「えっ!? このままお城に!?」
ジャンベル城へはまた日を改めて訪ねることになるだろうと思いこんでいたため、予想すらしていなかった事態に緊張が込み上げ、リリアの表情がこわばっていく。
セドマだけならまだしも、オルキスが荷担してしまうと、王子様へのお目通しの話が一気に進んでしまうような気がしてならなかった。
風に巻き上がる髪を押さえながら、リリアはオルキスを見上げた。
嬉々とした表情で前方を真っ直ぐ見つめるオルキスに、納得のいかない気持ちが膨らみ出す。
「そんなに私を王子様に会わせたいの?」
何度も唇を奪い、こんなにも気持ちをかき乱し、「俺を好きなれ」とまで言っておいて、オルキスは王子にリリアを会わせるのが楽しみで仕方ないと言ったような顔をしているのだ。
オルキスに戸惑いの表情を浮かべられてしまい、リリアの中にどうにもできないもどかしさと寂しさが生まれる。
そんな顔ではなく「王子の所になど行くな!」と言って欲しいだけなのにと表情を曇らせながら、リリアはオルキスから目を逸らした。