「お。目、覚ましたか」



カーテンが開いたと同時に和樹が入ってくる。



「またあんたかい」



いつものように憎まれ口をたたく。
和樹とはいつもと変わらずにいたい。



「だめだよ。亜実!そんなこと言っちゃ。保健室までつれてきてくれたの和樹くんなんだよ」


「...…雄大じゃないんだ」



気がつくとそんなことをつぶやいていた。


脳裏に少しあった誰かに抱き上げられた記憶。

雄大だと思っていたのに、違った。


だって、雄大がいつも使ってる香水の香りがしたから。
起きたとき、きっとあれは雄大だって思ったの。



「違うな……」



和樹の香りは雄大のものとは違った。
だから、雄大の香りがするわけないのに。

もしかしたら、雄大が近くにいたのかな?



「……別れたんだろ?」



和樹があたしの顔を覗き込む。



「……え」



和樹の言葉に頭が真っ白になる。

〝別れた〟なんてあたしは知らない。