雄大の部屋に1歩足を踏み入れて、目の前に広がってきた世界はあの頃のまま。

別れたなんて夢の中の出来事なんじゃないかと思ってしまうぐらい。
コルクボードには相変わらずあたしたちのプリクラとか写真がいっぱい。



「なんで外さないのよ。バカ」



呟いた言葉は誰もいない部屋に沈む。



「お待たせ」



ドアが開いて雄大が入ってくる。



「あ、ううん」


「で?どした?」



ウーロン茶を手渡しながら雄大があたしを見る。


「あのね。ちゃんとお別れをしようと思ってきたの」


「は?」



怪訝な顔をする雄大。

雄大にとってはとっくに別れているんだから、当然の表情さもしれない。



「うん。お別れ」


「どういう意味?」


「ちょっと待って……」



一言断ってから、ウーロン茶をゴクリと一気に飲み干す。



「そんな一気に飲んで大丈夫かよ」



呆れたような顔になる。



「……うん」



コップをテーブルに置いて、深呼吸をする。