ドアが開くまでの少しの間。
はじめてここに来た時のことが、つい昨日のように脳裏に浮かぶ。



『俺んち誰もいねーから覚悟しとけよ』



なんて、言いながら家に入って行ったのに、家に女性ものの靴があって。



『げっ!母ちゃんいる!』



がっかりした顔をしてた雄大。



『なんで今日に限って帰ってくんの早いんだよ』



しゃがみこんで落ち込んでいた。
雄大との思い出はどれも色褪せない宝物。



「亜実」



雄大の声がしてハッと我に返ると、ドアが開いて雄大が出てきていた。



「……雄大」


「とりあえず、入りな」



どうしてここに来たのか。
理由は聞かず、あたしに手招きをする。



「うん」



門を通って、雄大が立つドアへと歩く。
本当なら、久しぶりじゃなくて今もよく来ているはずだったこの場所に。



「飲み物持ってくるから俺の部屋入っといて」



階段の手前でいままでと同じように上を指さす。



「うん」



付き合ってた頃となにひとつ変わらない言葉。
変わったのはあたしたちの関係だけ。



「久しぶりだなぁ」



なんとなく懐かしく感じながら階段を上る。



「……っ」