──ピーンポーン


ドキドキしながらチャイムを鳴らす。



「連絡しないできちゃったな……」



いま目の前にあるのは、和樹の家ではなく、雄大の家。

雄大にちゃんと振られるため。
今ここに立っている。

雄大からもらっていない、別れの言葉。
何も言われてないから別れた実感がいつまでも得られない。

だから、和樹と話す前に振られにきた。



『はい』



チャイムを鳴らしてから少したって、インタホーンごしに聞こえた声に、どくりと胸がなる。



「あ、あの……」



声が雄大のものだったから。
予定していた言葉なんて口から出てこなくて。



『……亜実?』


「あ、うん……」



たしか雄大には弟がいたはずだから、弟の可能性も考えたりしたけど、出てきたのは雄大のようだ。



『ちょっと待ってて』



ガチャリと音が聞こえて、インターホンが静かになる。

連絡もせずにきたから、雄大が家にいたことにホッと胸を撫で下ろす。



「はぁー……」



雄大が出てくるまでそんなにないはずなのに、とても長く感じた。