「……っ」



エンジンをかけて、車を発車させたところでスマホがなる。

画面を見れば、そこには百合さんの名前が表示されていた。



「……もしもし」



今更なんだろうと思いながらも、イヤフォンを耳につけて、電話にでる。



『亜美ちゃん、久しぶりー』



スマホの中から聞こえるのは、何も無かったような百合さんの声。



「お久しぶりです」



こうして、久しぶりにしか話さなくなったのは、誰のせいだというのだろう。



『いま、なにしてるところ?』


「運転中です」



突き放したような話方になってしまう。

正直、あたしと雄大を離した百合さんとはもう話したくなんてない。

あんなことをしたくせに、平然と話す百合さんに怒りがこみ上げるけど、グッと堪えている。



『そんなに冷たくしないでよぉ』


「当たり前じゃないですか。自分が何をしたかわからないんですか?」



おどけたように話す百合さんにイライラが止まらない。



『あたしだって、あんたなんか嫌いよ』



百合さんの声色が変わる。