『うん』



歩の優しい声色が伝わってくる。



「歩のことは大切だけど、誰よりも大切な人がいるの。その人が自分の中にいる状態で歩に向き合うことはできないよ」


『俺も一緒だから。前の彼女のことはこの先も忘れることはないと思う。でも、これから先の未来を亜実となら見れる気がするんだ』



歩の言葉はあたしの心を暖かくする。


でも……。



「ごめん、歩」


『……亜実』


「ごめんね」


『こればかりは仕方ねえよ』



歩の言葉に胸が苦しくなる。



「……歩」


『後悔しても遅いんだからな?』


「ありがとう。歩」



あたしに気を遣わせないために、言ってくれてるんだってわかる。



『後悔しないように、ちゃんとしろよ』


「うん。ありがとう。ひと花咲かせてくるよ」


『俺も。期待薄いけど、頑張ってみたい』



歩も幸せになって欲しい。

歩と結婚すれば、きっと幸せだったに違いない。

でも、こんなにも好きな人を諦めてまで、ほかの人目を向けることは出来なかった。

最後に一言、想いを告げさせてほしい。