『俺、今の仕事が好きなんだ。だから、いままでみたいなことはできない。自分の仕事を守りたいんだ』


「……歩」


『亜実はさ、俺のこと好き?』


「……うん。好き」



この言葉に嘘はない。
でも、たぶん歩の気持ちとは少し違う。



『うちの事務所、交際がバレたら別れるか結婚するかの2択なんだ。そのまま恋人でいることはできないんだよね……って、俺ら別に付き合ってないけど』


「二択……」


『このままだと亜実と友達でいることすら許されない。でも、夫婦ならなれるんだ』


「夫婦……?」



脳裏にウエディングドレスを着る自分の姿が映る。
でも、その時隣にいて欲しいのはやっぱり一人しかいない。



『亜実が俺のこと好きでいてくれるなら、俺はそうなりたい』


「あたしは……」



歩のことは大切。
でも、それとこれとは違うと思うんだ。

100パーセント後悔しないなんて言えない結婚をするなんてできない。

そんな中途半端な気持ちで歩に向き合うことはできない。