「だってはじめてだもん。春樹の口から彼女だなんて」


「言ってないからな。俺、モテるんだからな!?」


「自分でいわないでよー」



そんな春樹がおかしくて、笑ってしまう。



「よかった。ちゃんと笑ってくれて」


「え……?」


「スクープ記事みてから、ずっと暗い顔してた。亜実は自分の考えで動いていいから。何があっても自分を見失うな」


「……っ、ありがとう」



春樹の言葉がズシンと心に響いた。
春樹は本当に昔からあたしの心を浮上させるのがうまい。
お兄ちゃん、だからなのかな。



「あ……」



ポケットに入れたスマホが音を鳴らす。



「歩だ……」



ディスプレイには歩の名前が表示されていた。



「ちゃんと話せ。俺は曲作りしてくっから」



ぽんっとあたしの頭を撫でて、リビングから出ていく。



「……ありがとう、春樹」



聞こえたかどうかわからないような声で呟く。