正直なんて呼んだらいいのか戸惑ってた。
ふだん、友達と話すときは〝歩〟ってみんなが呼ぶしあたしもそう呼んでいた。

でも、まさか本人目の前にして、勝手にそう呼べるわけもなく。
名前なんて口にできなかった。



「ね?」


「でも、いいんですか?あたしの方が年下……」



たしか、歩はひとつ上のはず。



「敬語もなし。だいたいふだんテレビでみてる俺みて、さん付けなんてしてるの?」


「いや、それはないけど……」


「ふだん通り呼んでくれたらいいから。そして、年上とか年下とか関係ないよ。俺らはもう友達でしょ?」


「あ、うんっ」



ポンポンっとあたしの頭を撫でる歩の手が、なんだか心地よかった。



「俺も亜実って呼んでもいい?」


「うん」



歩の笑顔にはどうしても胸が高鳴る。

でも、これは歩に対してじゃない。
歩を通して、雄大をみてしまっているから。



「前に進んでいいんだぞ」



春樹がハンドルを握ってない手で、あたしの背中をぽんっと叩く。



「……春樹」



春樹にはあたしの考えてることなんて、すべてお見通しなんだね。