ただ、お客さんの話を聞いてるだけだと、自分に言い聞かせる。



「そのときの子供ができて、あたしたちもう結婚するの」


「け……っこん」



ついにあたしの手は止まってしまう。



「亜実ちゃん、ゆうくんが好きなのね」



百合さんが微笑む。

その笑顔がいまはただひたすらに怖かった。

やっと、雄大との未来を見れると思ったのに。
どうして、神様は不公平なんだろう。
どうして、あたしと雄大を結びつけてはくれないのだろう。



「ごめんね、亜実ちゃん」



その言葉すら嘘に思えた。
もう、誰の言葉も聞きたくなかった。
自分だけが置き去りにされている。
そんな気分だった。



「いえ、髪の毛切りますね」



ただ、そういうだけで精一杯だった。

また、雄大はあたしに理由は教えてくれないのだ。
どうして、この繰り返しなのだろう。
誰かから聞くくらいなら、本人の口から聞きたい。

それが、どんなに辛い現実だとしても。
あたしに向き合って欲しかった。