「いいから、いいから。ほら、百合ちゃん待ってるよ」


「はい!」



軽く身支度を終えて、百合さんの元へと走る。



「そんな急がなくて良かったのに」


「いやいや、そんなわけには。あれ?なんか百合さん輝きが増してる!」



百合さんは、前に会った時よりも綺麗になっていた。
いや、もちろん元々綺麗なのだけど。



「えー?そう、彼氏できたからかな?」



嬉しそうに微笑む百合さん。



「えー!うちの兄を吹っ切れたってことですか!?」



百合さんの髪の毛に触れながら、話す。



「春樹のことは吹っ切れてはいないんだけどね」


「なんかすみません。うちの兄が」



いつまでも、春樹のことで悩んで欲しくなかったから、百合さんに彼氏が出来たのはすごく嬉しい。



「いいのよ。あたしが諦め悪いだけだから!」



切なく笑う百合さんを見ると、自分に重なってしまって胸が痛くなる。



「春樹だってもしかしたら……気持ち伝えたらいいのに」