「珍しいね、亜実が忘れるなんて」


「ついにボケたかな!?」



なんておどけてみせるけど、ゆずの目はごまかせそうにない。



「やっぱなんかあったよね?ちゃんと話してよね」


「なんでもないよ!じゃあ一足先にいくね!」



ゆずからの尋問を避けるように、走ってお店のドアをあける。


言えるわけないよ。
相手はゆずの好きな人でもあるんだから。



「わぁー!百合さん、ごめんなさい!」



ドアを開けると見えてくるソファーで雑誌を読んでいる百合さん。



「あ、亜実ちゃん」



声をかけると、振り向いた百合さんが人懐こい笑顔で出迎えてくれる。



「ごめんなさい、今すぐ用意しますね!」



道具が置いてある部屋へと走る。



「ゆっくりでいいよー」


「百合さんお待たせするわけにはいかないですよ!」



百合さんに声をかけながら、ロッカーから自分の荷物をだす。



「亜実、準備しといたよ」



ひょっこりと奥の道具部屋から顔を出すオーナー。



「わぁ!ほんと、ごめんなさい!」



慌ててエプロンをつけて、オーナーに駆け寄る。