「……うん」



思い出したくないのに、いつも付きまとう、あの時の感情。

辛い想いが甦るから、そんな話は聞きたくない。
でも、雄大の顔が真剣だからきちんと向き合う。



「そんなことよりも!ちゃんと自分で亜実を守ればよかったって思ってる」


「……雄大」


「結果的に亜実を傷つけることには変わりがないのに、なんであんなふうに勝手に別れたんだろうって」



キーッとブレーキがかかって車がとまる。



「……ここ?」


「覚えてる?」



車の窓から見える、砂浜。



「うん、覚えてる」


「よかった」



あたしの返事に、無邪気な笑顔になる。



「懐かしいよな。ここ。あの頃は電車を乗り継いで来たっけ」


「うん。懐かしい」



高一の夏休み。
雄大とふたりで電車を乗り継いで来た場所。

なにがあるかもわからなく、ただ電車に乗った。
窓から見えた海に、近くの駅で降りて来たんだよね。



──ちゃんと、働いて食っていけるようになったら亜実と結婚したい。


雄大のあの時の言葉、いまでもしっかりおぼえてる。