「でも、見習いやりながらだとカットとか任されんの早いんだろ?俺はまだシャンプーばっかだよ」


「そうだね。いつも仕事終わってから練習させてもらったりしてたから。そのへんはもう任されてる」



専門学校より通信を選んだのはこれが理由だった。
早く1人前になりたかったから。



「そっかー!俺も頑張ろう」



助手席に座る雄大がガッツポーズをしてる。



「さてと、ナビしてね。送りがてら話そう」


「あぁ」



雄大の返事を合図にあたしは、アクセルを踏んで発車させる。

助手席に雄大が座ってる。
本当はあのまま一緒だったらよくこうして、車に乗ったりしていたのかな。
なんて、考えても意味のないことを考えてるしまう。

あの時、新しい命があることに気がついて、雄大から目をそらしたのはあたしなのに。

いまさら、なにを思っても遅いのに。



「亜実、香水変わってないんだな」



隣から雄大の手があたしの髪へと伸びてくる。



「うん。雄大もね」



車に乗るとよくわかる。
ふたりで買った香水が。
同じ香りが絡まってる。