「こうでもしないと一生言わないつもりでしょ?」


「言うつもりなんてなかったよ。もともと」


「……嘘だ」



2人のやりとりが信じられなかった。

だって、あたしの知ってる昌也は、はじめから香莉菜の彼氏だった。



「まぁ、嘘じゃないから」



フッと笑ってあたしを見る昌也。



「お店、戻る」



その場にいることなんかできなくて、そのままドアを開けてお店の階段を降りる。



「亜実!」



後ろからパタパタと聞こえてくるミュールの音。



「この前はごめんね。完全なる嫉妬」


「誰でもそうなるよ」



あたしは、香莉菜の大切な人を奪ってしまったような感覚にまとわれた。



「前から、昌也は亜実の話をすることが多かったんだ」


「……っ」



香莉菜の言葉に胸がぎゅうっと締め付けられる。



「春樹といろいろあったあたりから、昌也は亜実のことがすごい心配で、あたしとはあまり話してくれなくなった」


「……香莉菜」



香莉菜の瞳に浮かんでくる涙。



「あたしは未だに昌也のことが好きだよ」


「うん……」