「そのうち、亜実のことよりも好きになる予定」



ニヤっとあたしを見る。



「あたしのこと、忘れないでよね?」


「ばーか。そんなの当たり前だろ」



ここの海でこうして、たわいもない話をする。
命日といってもそれだけ。
ただ、それだけでいいの。

ずっと心に生きている。
あの時死んじゃった赤ちゃん。



「いつかまた」



会いたいと願う。
あの日からずっと願ってる。

1月の寒い海辺で、あの日もらったエコー写真に軽く口付けをする。



「それ、まだつけてんだな」



春樹があたしの薬指に触れる。



「……うん。雄大はつけてないだろうけど」



あたしの薬指に輝く、雄大とのおそろいの指輪。
この指輪を見ればなんだって頑張れるんだ。

あの、ハートの欠片。
あの欠片は雄大のもとに戻っていったけど、いまどうなってるのかな。

……会いたい。
会えない期間が長いほど、その想いだけが強くなっていく。