「お前……」



春樹が立ち上がってあたしを見下ろす。



「え?」


「その質問はねぇだろ」



あたしに背を向けて海辺に歩き出す。



「春樹?」



そんな春樹をあたしも追いかける。



「俺が好きなのは今でも変わらねぇよ」


「……え?」


「亜実しかいねぇだろ」



春樹の表情がとても傷ついた顔をしてて、目が離せなくなる。



「どうこうするつもりはねぇから。安心しろ」



あたしの頭にポンッと手を置く。



「……春樹」



もう、その気持ちはなくしたと思ってた。
あの罪を犯したあの日から。



「亜実だって変わってねぇんだろ?」


「そう、だね」



変わるわけがない。
あたしの好きな人はいつだって同じ人だ。



「俺だってちゃんと気になってる人はいるから」


「え!?本当!?」


「あぁ」



春樹の顔が心做しか赤い気がする。



「芸能人!?」


「いや。一般人。こっちの子だよ」


「へー!」



春樹のこういう話、聞いたことがなかったからすごく嬉しい。