「似てる人とかじゃねぇからな?」



あたしの考えを当てるように目の前の人は言う。



「ええ……」



彼の左腕についてる腕時計。
それは去年あたしが誕生日プレゼントにあげてからずっとつけてくれているものだった。



「仕事仲間とご飯は?」


「いや、急な出来事でありまして……」



あたしはなんで言い訳を考えようとしているのだろう。
はじめから、知り合いのお店に行くとでも言っておけばよかった。



「家族のみんなには内緒にしといてやるけど」


「うう……はじめはこんなつもりじゃあ……」



あたしはただのお客さんのはずだった。



「え!?もしかして亜実ちゃんのお兄ちゃんなの!?」



ずっと困惑の表情をしていた百合さんが、やっと状況を把握したらしい。



「……そうだ」



春樹が静かに頷く。

春樹もいまではあたしのことを妹と認めてる。
流産の一件があたし達の認識を改めさせた。

もう二度と、あんな悲しい思いはしたくないから。