百合さんはうちの美容院を使ってくれるお客さん。
そのお客さんのためになるなら、あたしもここにやってきたい。



「亜実ちゃんまたきてくれるって本当!?」



指名のお客さんの相手が終わり、駆け足であたしの元に戻ってきてくれる。



「うん。落ち着いた店で居心地もいいし。なんか気に入っちゃった」



あたしも今年22になる。
お酒だって飲めるようになった。
仕事の疲れを癒せるような、そんな1人でも来れるところを探していたところだ。

ここなら、それにぴったりに感じる。



「嬉しいなぁー!また亜実ちゃんが来てくれるなんて!」



無邪気にはしゃぐ姿は、可愛くて。
これであたしよりも年上だっていうんだもん。



「来週の月曜兄貴くるよ」



だいくんがポンッとメニューを百合さんの頭に載せる。



「え!?本当!?でも来週かぁ……」



百合さんが悩ましい顔になる。



「なんか都合悪い?」



だいくんのお兄さんのこと、百合さんは気になってでもいるのだろうか。