「ばーか、俺もう社会人だぞ?いつまでも実家にいるほうがおかしいだろ」



あたしの頭をわしゃわしゃっとなでる。



「そっか……そうだよね」



自分で稼いでるんだもん。
実家出るのだっておかしくないよね。



「ん。だからたくさん遊びに来いよ?」


「うん」



彼氏が一人暮らしというのは初めての経験だ。
まぁ、いままでは彼氏がみんな学生だったから当たり前なんだけど。



「亜実ー!春樹くん!」



曲がり角を曲がったところで、見えてきたお母さんの姿。

こちらにブンブンと手を振っている。



「お母さん!」



嬉しくなって、春樹から離れてお母さんに駆け寄る。



「亜実、おかえり」


「ただいま」



お母さんに背中を押されて、家の門を潜る。



「春樹くん、いつもありがとうね」


「いえ、僕が好きでやってることなので」



振り向いて、ゆっくりと歩いてきた春樹を見るお母さん。



「お父さんは……?」



玄関に靴がないことを確認してお母さんに聞く。