「わかった。早くよくなれよ」



ポンッとあたしの頭を撫でて、部屋を出ていくお父さん。



「よくなったら話しましょう」



春樹のお母さんもその後に続く。



「母さんは、ちょっとまって」



お母さんの腕を掴む春樹。



「待っても変わらないわよ。言いたいことは。いつかは別れることになるわよ」



そう話して、春樹の腕を払う。



「……くそ、なんだって言うんだよ」



悔しそうにお母さんの背中を見送る春樹。



「あたしたち、別れなきゃなのかな……」


「……んなわけねぇだろ。なんでこんな好きなのに別れなきゃなんねぇんだよ」



苦しそうな顔で床のスリッパを蹴る。



「なんで急に……」



お父さんだってその前までは大丈夫だった。



「春樹のお母さんと知り合いなのかな?」


「知らねぇだろ……」


「でも、お父さんが春樹の名前聞いて一瞬考え込んでたから」



あの時、少し不思議に思ったんだよね。
でも、まさかこんなことになるとは思わなかった。