お父さんの柔らかな話し方は昔からとても大好きだ。

なんだか、春樹ってお父さんと雰囲気が似てる気がする。
だから、安心できるのだろうか。



──ガッシャーン!!!



和やかな空気が流れていたなか、外でそんな音が聞こえて、全員ドアの方に目を向ける。



「え!?母さん!?」



ドアの前にいたのは、春樹のお母さん。
お母さんの前には割れた花瓶。
どうやら、持ってきた花の入った花瓶を落としてしまったようだ。



「なにやってんだよ!普通花瓶に入れて持ってこないだろ」



春樹がお母さんに駆け寄って、割れた花瓶を拾う。



「ご、ごめん。おかあさんおっちょこちょいね……」


「……?」



春樹のお母さんは、こんなにオドオドしたような感じではないはずだ。



「春樹くんのお母さん……?」



お父さんがドアの前に行って、一緒に花瓶を拾う。



「あ、すみません。はい、そうです。俺の母親の……「料理評論家の植木美智さん」



お父さんが春樹の言葉を遮って、名前を口にする。