春樹はバンドをやっているから、休みといってもその練習があったりして暇ではない。
仕事をしながらも、夢を追いかけてて本当にすごい人だなと感心する。



「あら、亜実ちゃんもきてたんだ!」



春樹のお母さんがリビングから、ひょっこりと顔を出す。



「なぁ、母ちゃん、誰か来てんの?」



昌也が玄関にある、女物の靴を指す。



「んー?あたしもさっき帰ってきたばかりで、この家には春樹しかいないはずよ?」


「じゃあ兄ちゃんの……?」


「バカね。春樹の靴なわけないでしょ。お友達でもきてるんじゃないの?刹那ちゃんとか」


「刹那さんの靴っぽくないけどなー」



不思議そうに首を傾げる。



「春樹いるならちょっと顔、出してこようかな?」


「おう、行ってこい!」



昌也に背中をぽんっと押されて、あたしはそのまま階段を上る。



「春樹ー?」



コンコンっとノックをするけど、返事はない。