「雄大から聞いた」


「……知らない」


それだけ言って、布団にもぐる。

頭の中では和樹の言葉が延々と繰り返される。



「和樹くん。亜実と二人にしてもらってもいい?」


「……わかった」


そのままカーテンが開く音が聞こえて、布団の中でも和樹が出ていったことがわかる。



「ねぇ?香莉菜」



布団から顔を出して、香莉菜の顔を見る。



「ん?」


「片方が別れようって思ったら終わるの?」


「……亜実」



香莉菜の眉が下がる。

困るよね、こんな質問されても。


でも、こんなのってあるの?
あたし、別れなんて告げられてない。

別れたいなら別れたいってちゃんと言って欲しかった。



「だって、そんな別れ方聞いたこともないよ」


「うん。あたしもない」


「まだ大好きなのに」


「……亜実」



こんなに好きにさせといて、雄大はいなくなっちゃうなんて。

考えても考えても思いつかない。
雄大の怒った顔すら最近は見ていない気がする。

我慢、させていたのだろうか。

最後に好きって言ったのは、いつだったか。
最後に好きって言われたのは、いつだったか。

もっと言っておけばよかった。
もっと聞いておけばよかった。

失った今だからそう思うのかも、しれないけど。