「桃代ちゃん!」
固まって動かない桃代の体を揺らしながら大きく名前を呼んだ和馬に
「…えっ!?」
と五度目の呼びかけにやっと気付いた桃代は、驚いた顔で和馬を見た。
「やっと気付いたよこの人。」
疲れたように
桃代から離れると
教室のドアを開けた。
「じゃあ、そろそろ入るか!」
ん?
入るって?
桃代は、すぐさま
首を左右に動かし見渡した。
花梨となっちゃんは?
そう、二人の存在がない事にやっと気付いた桃代は
一人、その場で焦っていた。
「いないいないいない〜〜!」
頭を抱えながら今にも泣きそうな顔をしていた桃代を
和馬は落ち着かせようと
桃代の肩に手を置いた。
「あの二人は、もう中に入ったよ!」
「えー!なんで〜」
一人残された自分に
少し悲しくなってしまっていた。
「もーいいよ!!入るっ」
そんな事で
桃代は、怒って教室へ自分から入って行った。
やれやれ…
そんな桃代の後ろ姿を見ながらため息をついた。