「姫宮、風呂上がったぞ。バスタオルありが、」
ありがとうと言おうと思ったら陽菜はスヤスヤ寝ていた。
「姫宮?」声をかけても起きる気配はなかった
陽菜の近くに行くと、いつもより幼い顔をして寝ていた。
「陽菜、起きろよ。」
ぼそっと呟くと…
「んー。八神君ー?」
かなり眠そうだが起きたみたいだ。
「おはよ。風呂上がったぞ。あとバスタオルありがとな。」
「じゃあ入ってくるね。おやすみ!」
なんでこのタイミングでおやすみ?
「おやすみって姫宮、風呂入るんだろ?」
「え?私は入るけど八神君はもう寝るでしょ?」
「いや、姫宮が出るまで起きてるよ。」
というか、俺のせいで寝るの遅くなってるのに先に寝るってそんなことしたくない。
俺はそう思っているのに、陽菜は
「引越しで疲れてるんだから寝ていいよ」
なんて、優しい言葉を言ってくれる。
でも、俺は起きていたいから陽菜が許してくれそうなことを言ってみた。
「わかった。眠くなったら寝るから姫宮は気にしなくていいからな?」
陽菜はちょっと不満そうだったが
「わかった。じゃあ入ってくるね?」
と言って風呂場に行った。
お風呂に入っていても、やっぱり八神君の言動が気になってしまう。
さっきの頭ポンポンだって…
思い出すだけで心臓ドキドキするし…
さりげない優しさとか。
さっきだって、私の為じゃないけど…
「姫宮が出るまで起きてるよ」
とか…
頼んでいないのに、食器を洗っててくれてたり…
「姫宮は頼むの苦手だろうから、これからは俺が勝手にやる」
って、私のことを気にかけてくれたりして…
八神君は、みんなが言っているような、無口でクールな人なのかと思ってた。
でも、冷たくなんかなくて一緒に暮らし始めてまだ1日目なのに彼の優しさをたくさん知ってしまった
明日からまた大丈夫かな。と不安もある中で、半分以上は楽しみな気持ちでいっぱいなんだ…
そういえば、さっきソファーで寝てた時…
「陽菜」って聞こえたんだけど…
八神君が呼ぶわけないし…気のせいか!
あ、そろそろ上がろっと。
『ガチャ』
お風呂から上がってリビングに行くと八神君はまだ起きていた。
ソファーに座ってテレビを見ているのか、私がお風呂から上がったのにまだ気づいてないみたいだ。
「八神君?上がったよ」
呼んでいるのに反応がない。
近づいてみると
「あ、寝ちゃってる」
やっぱり、眠かったんだな。
八神君を起こそうと近づいてみたら
さすが、学年1のイケメン。
寝ていてもすごくかっこいい。
普段はクールな雰囲気だけど
寝ている時は、少し幼い感じでかわいいな…
少し起こすのが可哀想だな。
そんなことを思いながら、八神君の顔を眺めていた
「竜くん…」