蝉の鳴き声が脳裏でこだまする。

 男が動きを速めるにつれ、体温が上昇していく。

 息ができない。

 はやく、はやく――。

 私は浜辺に打ち上げられた人魚のように水を求めてもがく。

 男が小さな呻き声をあげて、果てた。

 息を弾ませながら視線を泳がせる。窓の向こうには相変わらずまばゆいほどの夏空。

 雨は降らない。

 私は泣きたくなった。

 いくら肌を重ねても、きつく抱きしめられても、私の乾きが満たされることはない。

 かすかに、雨の匂いがしたと思ったのに。