朝の電車でも、影が薄いのか、ぶつかられて「あっすみません…」と言われてからやっとその時に存在を気付かれることが多い。

人数が多いグループの1人がぶつかった時は、「気付かなかったんだけど」と感想を呟かれて笑いものにされることが多い。

それは高校に入ってもそうだった。

中学生の時は、小学校上がりが多い為、友達も少なからずとも居たから平和だったし、よく遊びにも行った。

でも高校で離れ離れになってからはそれっきり、疎遠になってしまっている。

良くあること、らしい。

この人見知りな性格のせいで、男子はともかく、女子とも話せなくて、友達0。

もっとスラスラ喋れてれば、何か違っていたんだろう。

いや、何もかも、違っていたはず。

挙句の果てに、声は小さいし、頭脳もそこそこ、運動神経はすこぶる悪い。

…こんな人間性だと、誰にも好かれるはずがない。

自己嫌悪したところで、何かが変わるわけじゃないし、ただそんな自分がもっと嫌いになるだけ。

なのに、止まらないのだ。
こんな自分が、死ぬほど嫌だから。

こんな自分が嫌になるくせに、変わろうと努力もしない自分が。


「よーっす、今度はおはようって言えるか?」

何の予告も無しに、彼は現れる。


…こういう、明るい人は人生が楽しくて仕方が無いんだろうな。

「……おはよう、ございます…!」